エルピス(2022) |第3話をレビュー

出典 https://www.ktv.jp/elpis/

エルピス 3話のタイトルは”披露宴と墓参り”。

彼らが追っている松本死刑囚の冤罪解決を急ぐべく、当時の警察官、被害者側のインタビューをもぎ取りVTRを作成する浅川さん(長澤まさみさん、キャスター役)と岸本くん(眞栄田郷敦くん、ディレクター役)が奮闘する回。

今回は岸本くんのモノローグで進みました。このモノローグが私には効いてました。基本すこし離れたところから、時には皮肉っぽく、実に淡々と説明しているんだけど、大事なところでは急に近寄ってガッツリ自分ごとにしちゃう。そこに私はぐっときました。

VTRでの肝となる当時の警察官や被害者のインタビューをもぎ取るところは、大変ながらも浅川さんの誠意によって思い通りに進みます。VTRチェック中に浅川さんの元彼斉藤さんが突撃してきてダメ出しして浅川さんがタジタジする。そんな二人を眺めながら、浅川さんと斉藤さんの路上キス写真を画像検索して拡大して見てるところは、おまえちゃんと仕事しろ!ってなりました。このへんは、岸本くんのモノローグがだいぶ離れたところにありました。

 話として面白いのはここで、いざVTRを自分たちの番組で放送しようとしたところに大きな大きな壁があるところです。番組の若手メンバは諸手を挙げて大賛成、だけど企画を通すか通さないかの会議になると、プロデューサーやチーフプロデューサー、無能なマネージメントレベルの人間がブロックする。番組の色に合わないとか、深夜番組の視聴者層には引っ掛からないとか。そこそこの大きな企業に勤めたことがある人であれば、経験したことがある喪失感ですよね。元々、このドラマの設定はテレビ局ではなかった、という話を製作側のインタビュー記事で見ました。冤罪事件という大きな柱の横に、こういった社会の矛盾みたいなものも写したい意図があるのかも、と思っています。このドラマの場合は、冤罪の発端となる出来事にテレビ局の報道が原因ということもあり、本当に大きな大きな壁になってしまっています。

 このドラマの演出で面白いのは、番組の若手スタッフが諸手を挙げて賛成するシーンは、普通であれば感動的に演出するもんだけど、どこか茶化してるように演出してるんですよね。モノローグだけじゃなくて演出事態が全般的に俯瞰的に撮ってるのがとても面白いです。

 そして、岸本くんがこの事件を追いかける動機のようなものが明らかになった回でもありました。岸本くんは、学生時代の友人カイくんをいじめを苦にした自殺で亡くしていたのです。その学生時代の同級生の結婚式披露宴に参加した岸本くんですが、友人代表の出し物で踊ってみたり、新婦の挨拶で泣いて見せたりしています。しかし実は本当の自分はここにはいません。友人たちを好きじゃないとまで言っています。

 岸本くんはいじめを苦に自殺した友人をいつまでも思っていて、毎年の命日には墓参りを欠かせません。しかし、披露宴の主役をはじめ半分の同級生メンバは墓参りに参加しません。もしかしたら、思い出すこともあまりないのかも。そんな話を、岸本くんの母親と岸本くん、岸本くんの友人の3人の会話で見られます。岸本くんとこの友人は、毎年墓参りに行く組なのですが、その友人の語りシーンがなかなか良かったので是非見ていただきたいです。亡くなった友人を忘れることができた人が人生を上手く渡れる人だと。恐らくこの友人の立ち位置は、忘れることを良しとする同級生と岸本くんの中間。忘れることを良しとする同級生になりたいけれど、なれない。けれども、岸本くんのように命日当日にお墓参りに行くほどでもない。岸本くんは、忘れることなんて絶対ないし、なりたいとも思っていない。毎年当然のように命日に墓参りに行く。この友人は中間の立場から、客観的に分析しているんだと思われます。

 局からVTRは放送不適切と判断された時、急に自分ごとになった岸本くんのモノローグが今回の一番。

”あー、正しいことがしたいなー、正しいことが したいなー、(中略)、正しいことがしたいんだ。”

 これが、この松本死刑囚の冤罪を岸本くんが追いかける理由なのでしょう。岸本くんは、両親共に弁護士で、父親は正義感あふれる仕事ぶりの末に亡くなったかた。お父さんみたいにならないように、と母親からはだいぶ甘やかされて、空気が読めなかったり仕事が雑だったりしますが、やはり正義感の強いお父さんの血が混じっているんでしょうか。浅川さんと岸本くんは、この”正しいことをしたい”気持ちで繋がっているということがわかった回でもありました。

 しかし、浅川さんの元カレ、政治部斉藤さんの動きが怪しいです。

この冤罪事件の秘密を掴んでしまった?今回の前半までは協力的だったけど….。

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